ベータチタニウム オフィシャルブログ

2007年5月9日

チタンは軽い? 強い?

チタンってどんな金属ですか??

この質問に対して一般的に言われるのが

【軽い】

【強い】

【錆びない】

と、認識されています。
しかしこの三つの特徴は全て一概に正解だとは言えないのです。
間違いでも無いのですが、余りに偏った認識を生んでいる為にお客様の中でも誤解をされている事が多々あります。

間違いではないのですが正解ではない

これを一つ一つお話しして行きたいと思います。

まずは【軽い】について

チタン=軽い

この図式を成立させる時に必要なのは「何に比べてか?」

になります。

下の図を御覧下さい。

金属の重さを比較する時に一般的に使われる「比重」をグラフで見てみましょう
(比重=物質の質量と、それと同体積の基準となる物質の質量との比
水の重さが 比重=1となります)鉄系統の金属 SS400、S45C、SCM435 ステンレスのSUS304が約7.8

チタン系列の純チタンの1種、2種、64Ti、64Ti鍛造が約4.4

アルミニウム合金のA5052、A7075が約2.7

ここで数字が嫌になってきた人の為に簡単に言いますと、

鉄は同じ質量の水の7.8倍

チタン系列だと同じ質量の水の4.4倍

アルミニウム合金だと2.7倍の重さがあるわけです。

っということはチタンよりもアルミニウムの方が約40%も軽いと言う事になります。

鉄に比べると軽いですがチタンより軽い金属は結構多いんです。

グラフには無いですがマグネシウムなんかはもっと軽いですし。

チタンの特徴の【軽い】って言葉を見るときに「鉄よりは」と認識いただいたほうが良いですね。

しかし、実際チタンの製品は「軽い」のです。

言ってることが支離滅裂じゃないか?

ちょっと言い方を変えますと

「軽く作ることが出来る」のです。

その説明を次の【強い】でお話します。

チタン=強い

これも【軽い】同様「何に比べてか?」を見てみましょう。


この図は「引張強度」をグラフにしたものです。
(引張強度=物質を引っ張った時に材料が耐えうる最大の応力のことをいいます)乱暴な言い方になりますが「金属の強さ」と認識してもらいましょう(厳密には違いますが、とてつもなく話が長くなりますので気になる方は御質問下さい)

このグラフでの引張強度(単位はkg/m㎡)を見ると強い順番に並べると

64Ti鍛造=120
SCM435=100 (クロモリ鋼)
64Ti=95
S45C=70(炭素が約0.45%含まれている鉄)
SUS304=65(代表的ステンレス)
A7075=50(超々ジェラルミン)
SS400=40(代表的 鉄)
純チタン2種=34
純チタン1種=27
A5052=26(超ジュラルミン)

となります。

64合金はクロモリ鋼と同じくらいの引張強度を実現していますが、
純チタンは鉄系統やステンレスよりも劣ります。

チタン=強い

ではなく

チタン合金(64合金クラス)=強い

が正解なのです。

純チタンはその引張強度の低さから曲げ加工に適していてオートバイのマフラーに使われているのは純チタンになります。
(逆に64合金は強すぎて曲げ加工に適しません)

さて、ここでお気付きの方もいらっしゃるでしょうが

「軽く作ることが出来る」

の答えは64Ti 64合金の強さが非常に大きくかかわってきます。

最も比重の軽いアルミニウム系は下から数えた方が早いくらい引張強度が低いです。

Ti-6Al-4V=64Tiは比重はアルミニウムに次ぐ軽さで引張強度はトップクラスの性能を誇ります。

と、言う事はある程度のアルミニウムと同等の引張強度を持たせる為に質量を低く抑える事が出来るのです。

ボルトで考えると、中空加工で中に穴を開けて質量を落としてもアルミニウム以上の強さを実現できるのです。

また逆に考えると限られたスペースで最大限の強さと軽さを実現出来るという事です

ボルトという基本的に埋め込まれてしまうところでは質量を増やして引張強度を上げる事が出来ません。

その、素材そのものの強さが直接かかわってくるのです。

ベータチタニウムがスペシャリティボルトの材料として64合金 Ti-6Al-4Vを選び、さらに鍛造にするのはこういった理由からなのです。

軽いだけじゃなく、強いだけじゃない

軽量高強度こそボルトに求められる必然の性能なのです。

話が長くなりすぎたので【錆びない】についてはまた次回にします。

カテゴリー:螺旋屋徒然ブログ

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