ベータチタニウム オフィシャルブログ

2012年6月25日

削りの魅力、電気の実力、塗装の胆力、螺旋の結力。

今月24日に発売されたロードライダー誌の巻頭特集(P26~29)で紹介されましたこの製品。カワサキ水冷系EgのダイレクトイグニッションコイルヘッドカバーKit。私松山もたまたまご縁が出来て開発の初期段階からこの製品開発の中心であるMotor Labさんに声を掛けて頂いて製品の完成をお手伝いさせて頂きました。最初に話が出たのがもう去年の末だったかな?色々と試行錯誤とテストを繰り返し、本日6月25日をもって販売受付を開始することとなりました。

今回のロードライダー誌の紙面では開発のテスト時のものを撮影していただいていて取り付けた状態の写真しか載ってなく、取り付けテストということでベタベタとアルミの地肌を触った写真しか間に合わなかったのですが、折角あのように巻頭特集で組んでいただいているので製品単体写真も見栄えの良いものをお見せ出来ればなというところと、本誌では主にダイレクトイグニッションコイル化の記事でしたのでこちらではビレットパーツとしての製品説明の補足でも書いてみようかと思います。

製品単体の写真になります。(クリックで大きくなりますので是非ご覧ください)

今回MotorLabが選んだ材料はA6061。機械的性質の中でも強度はA7075/A2017等のジェラルミン系の材料には劣りますが、高熱に晒されるヘッドカバーへの対策として耐腐食性に優れ、重量的に純正と同等まで追い込む際に必要となってくる全体にRをつけて切削される三次元肉薄加工にも適し、その加工においても快削性に優れ、長時間加工が必要となるヘッドカバーとして現在入手出来る材料の中で最も適していると考えました。

その他特性としては大きな熱変化も置きにくく純正品に発生しやすいオイルリークにも改善が期待出来るとも考えています。

多分ですがMotorLabの代表川畑さんが一番見て欲しいのはコッチだろうなと畑は違うが削り屋として思う。裏側にこそギリギリまで拘って拵えたモノが見えてくる。

このヘッドカバーを造り出したときに話した内容は今でも鮮明に覚えている。

『このヘッドカバーに仕事を与えたい』

綺麗でかっこいい。それはビレットパーツとしては当たり前なんでしょうけど、それを”飾り”で終わらせたくないと思える初期設定を生んでしまった作り手の、生みの親の贅沢なんだろうなと共感しました。

ダイレクトイグニッション化というのはこのヘッドカバーがあって始まったんです。

程なく尼崎が誇る電気屋。SPECIAL AGENTさんも加わりこの製品に仕事を与える事が実現しました。単純にD.Iにするだけであれば純正のコイルとD.Iコイルを換装すれば装着は可能なのですが、D.Iを安全且つ的確に作動させるためには電気に対する専門的技能が必要です。そこに削り屋だけでは完璧に辿りつく事は出来ないと考え、スペシャリストを招きました。この辺はロードライダー誌で詳しく記事になってますので是非ご覧ください。

そして、ビレットパーツをビレットで終わらせない為に。
サンクチュアリー東京ウエストでのガンコート処理が加わります。

上記の写真は実は既にクリアガンコート塗装が処理されています。
何故ガンコートなのか?それは今回のヘッドカバーをA6061で造るにあたり、材料自体で有する放熱性に対するアドバンテージを確固たるモノにする為がまず一点。更に状況的に予測されるガソリンの塗布に対してラッカーペイントだとガソリンで溶ける可能性が高く、ウレタンペイントだと取り付けのボルトを締めたときに表面を引っ掻いてしまい剥離する状況に対する塗幕を考えました。ガンコートは薄い塗膜で表面がとても硬く、ブレーキフルードや剥離剤でも剥がれない耐薬品性を備えた塗料なので上記の放熱性を含めてエンジンパーツを塗るには最適だと考えたからです。

ガンコート 黒七分艶

ガンコート フォーミュラーレッド

そして何より大事なのはビレットパーツを殺さない塗幕。
写真をクリックして拡大していただくとわかりやすいのですが、ビレット表面の削り跡を見事に浮かび上がらせることが出来ます。塗幕が厚いとどうしてものっぺりとした印象が否めませんが、ガンコートはビレットヘッドをさらに引き立たせる事が出来ました。

こうしてMotorLabが削り、SPECIAL AGENTが操り、サンクチュアリ東京ウエストが彩り。

そんな力が合わさった製品が出来ました。

最後に。

キットパーツを締結するという役割を私達が担わせていただきました。

正直このキットを組むときに6本のボルトをベータチタニウムが担当するとコストの面での増加が高くなるという話をMotorLab社に話しました。『うちの製品はオプションで良いよ』と最初は私も言っていたのですが

『一辺の隙を作りたくない』

そういう言葉を言っていただきました。

確かに純正ボルトでは腐蝕はある程度避けられないのも事実だな、と思い
今回キットパーツとして皆さんとご一緒させていただきました。

キャリパーブリッジボルト程体感は出来なくても。

ローターボルトほど軽量化に貢献出来なくても。

彩を失わないためのチタンボルトという使い方。

それは一つの道なんだなと。

テストの時の一枚。

要望されたのは『似合うボルト』

螺旋らしく。必要最小限且つ必要強度の実現。

シンプルイズべストの形状。

一つ一つを繋いでいく仕事の面白さを噛み締める仕事をさせていただきました。

GPZ900R用 ダイレクトイグニッションコイルヘッドカバーキット

Modeling&Machining-Motor Lab
ElectricityControl-SPECIAL AGENT
Surface coating-SANCTUARY TOKYO WEST
TitaniumBolt-βtitanium
¥234,150(ヘッド、制御装置、塗装、ボルト、TAX込み)
本日から発売開始ですが、当面は取り付けにおいてある程度の取り扱い上の注意と実験段階からご協力いただき、4社合同の取り扱い製品に対してのご理解を頂いているしゃぼん玉本店様、しゃぼん玉一宮店様、そしてサンクチュアリ東京ウエストにてお受け賜りいたします。

またしゃぼん玉様両店舗にはクリアガンコートを施した製品を、サンクチュアリ東京ウエストには黒七分&フォーミュラーレッドの製品を展示していただいております。お近くの方は是非、スタッフまでお問い合わせの上実物をご覧になってくださいませ。

カテゴリー:螺旋屋徒然ブログ

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